2016年1月17日に実施された狭山公園の宅部池の公開かいぼりを観覧してきました。たくさん勉強になったのでブログに記録しておきます。
もくじ
かいぼりとは?
まず「かいぼり(掻い掘り)」について説明しておきますね。
農業用のため池を維持するために、水を抜いて池の中を点検をしたり、たまった土砂を取り除く日本の伝統的な管理方法です。近年では公園の池などで悪化してしまった自然の浄化能力を回復させるためにも実施されています。
具体的な作業としては、まず池の水を抜き、外来種を駆除し、ゴミやヘドロを清掃し、池底を天日干しにして浄化します。その後、井戸水による貯水や水草の植栽や在来種の放流などをします。
今回、宅部池の「かいぼり」では、外来種の駆除、ゴミと汚泥の除去、水質浄化、水中に眠る種子からの水生植物の復活という目標を掲げています。
宅部池の公開かいぼり行ってきました
10時スタートということで僕が着いたのは10時20分頃。その頃には人がいっぱい集まっていました。
スタッフさん達が池の中で作業しています。
原付バイクが沈んでいたみたいです。
池の側に仮設の本部を設置して広報活動をされていました。
公園スタッフさんがかいぼりについて説明してたりします。
今回の公開かいぼりまで、僕は宅部池を「たくべ池」だと思っていました。本当は「やけべ池」って読むそうです。
「やけべくん」。こんなキャラクターいるの初めて知りました。
今回の公開かいぼりでは捕獲したばかりの生き物を展示されていました。スタッフさん達に質問ができて非常に有意義なイベントです。
在来種のモクズガニです。
外来種のミシシッピアカミミガメです。かなりデカいです。
食欲旺盛な外来種、コイとゲンゴロウブナ。立派に育っていました。
こちらも貴重な在来種、イシガイです。
スニーカーくらいの大きさのウシガエル。コイツも外来種です。
アメリカザリガニは緊急対策外来種です。
在来種のトウヨシノボリ(クロハゼ)です。
在来種のヤゴとテナガエビです。
釣りに使うルアー(疑似餌)。外来種の繁殖の原因は、人間による勝手な放流だそうです。宅部池は釣り禁止。
スタッフさん達が捕獲した生き物を調査していました。
かいぼりのスケジュールです。2月末に水入れをする予定みたいです。
かいぼりの工程表です。
かいぼりの効果として水質改善があるようです。
沢山の掲示物があって、とってもわかりやすいです。
前回2010年に実施したかいぼりの成果なども公開されています。たっちゃん池の柵に掲示されていました。前回は89%が外来種で在来種は5%しかいなかったそうです。
ガイドウォークが実施されていました。水際まで行ってスタッフさんにガイドしてもらえるようです。僕も参加したかったけど満員御礼でした。
かいぼりに関するQ&A
かいぼりについてNPO法人生態工房や西武・狭山丘陵パートナーズなど複数のスタッフさんから話を聞けたのでシェアします。
Q:なぜ外来種がいちゃいけないんですか?
在来種(元々その地域に生息していた生き物)の生息を脅かすからです。その影響は外来種によって様々ですが、生態系を崩して本来生息していた生き物が生きられなくなってしまうのです。自然界は共に関わりあって作られているため、池の生態系が崩れることで公園全体の生態系、ひいては日本全体の生態系も崩れてしまいます。
Q:外来種はどこからやってくるんです?
基本的には人間による放流です。宅部池にも生息しているブラックバス(オオクチバス、コクチバス)、ブルーギルは特定外来生物に指定されていますが、特定外来生物の放流は法律で禁止されています。個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金。法人の場合1億円以下の罰金です。
(宅部池では釣りも禁止されているわけですが)ブラックバスを釣り上げたら池に戻したらいけません。リリースはNG。特定外来生物の放流は法律違反です。持ち帰えるのもダメです。もし釣ったら殺さなければいけません。
Q:外来種と在来種の割合ってどれくらいですか?
まだ正確な数字はわからないんですが、本当のことを言うとほとんど在来種いなかったです。壊滅状態。やっぱりブラックバスがいるとほとんど食べられてしまうので、なかなか在来種は・・・。本当はモツゴっていう、クチボソっていう小さい魚が取れてもいいはずなんですけど、それが取れないってことはそれだけブラックバスが優勢なんですね。
井の頭公園の池も1回かいぼりをしてブラックバスとかブルーギルを獲ったら、だんだんモツゴの数が増えてきました。
Q:かいぼりで外来種を駆除しても誰かが放流したらまた繁殖しちゃうんですよね?
はい、あっという間に繁殖しちゃいます(涙)。
Q:宅部池のかいぼりは今回で何回目なんですか?
宅部池は元々田んぼの貯め池だったんです。詳細は不明ですけど、その当時は毎年のように実施していたと思います。狭山公園ができて80年になるんですけど前回が初めてで、今回が2回目のかいぼりだったかもしれません。
今回はバイクなどが見つかりましたが、前回から6年しか経っていないのでゴミは前回よりは少なかったです。前回は自転車も20-30台出ましたし、バイクももっと出ました。
Q:次回のかいぼりはいつやるんですか?
いやぁ未定ですね。やっぱ予算がつかないとこの規模の作業はできなくて。今回は運よく東京都さんが池の清掃として予算を付けてくれたので出来たんです。
Q:じゃあ毎年かいぼりをやるのが理想的なんですか?
そうですね。昔田んぼの貯め池として使っていた時には年に一回の頻度で水を抜いて泥さらいをして綺麗にするって作業をしていたんです。そうすることで水の中の生き物がすごく豊かになるんです。
Q:水を抜いたら在来種まで死んじゃうんじゃないです?
在来種はできる限り捕獲して再放流します。それでも在来種も死んじゃう。死んじゃうんだけど、元々そこに生息していた生き物はその場所の生態系にマッチしているわけなので復活するんです。戻ってくるんです。
田んぼって生き物が豊かだって言いますよね。でも田んぼって水を張る時期と張らない時期がありますよね。それにみんな適応している生き物たちなんですね。でも、今の状態だとヘドロが下に溜まってしまってそういうことも言えない状況なんです。
Q:ヘドロって何ですか?
何かくさーい泥です(笑)。こうなってしまうと特定の生き物たちしか住めなくなってしまうんです。だから今回はヘドロを取り除いたんですけど全然取り切れなくて・・・。50-60年前を知っている方は「水が透明で泳いでた」って仰るので、それくらいまで戻るといいんですが。
Q:たっちゃん池って呼ばれていますよね。男の子が溺れて死んだからって聞いたことあるんですけど、それって本当なんですか?
らしいですね。本当みたいです。となりのトトロでメイちゃんがサンダルを落とした池のモデルらしいですね。
Q:どんな人がかいぼりを実施してるんです?
主催は狭山公園の管理者である「西武・狭山丘陵パートナーズ」で、北川かっぱの会、NPO法人生態工房、井の頭かいぼり隊、狭山公園友の会、東村山市役所などの協力で実施されました。
Q:前回のかいぼりでは約800匹の外来種を駆除したそうですが、今回は何匹駆除できましたか?
外来種は7種類106個体です。1番多いのは中国原産のコイの40匹です。2番目に多いのがゲンゴロウブナです。これは日本の生き物ではあるんですけど琵琶湖の方にしか生息していない、本来はここにいるはずがないんです。これが35個体。次にバスが18とかです。ブラックバス。
次がウシガエルで9個体です。本当はもっといるはずですが、土に潜ったりして全て駆除できていないんですね。あとはミシシッピアカミミガメが2個体。展示していた大きい亀です。これも多分もっといるんですよ。陸に逃げたりするんで。30年くらい生きるんです。
Q:1月の下旬に水草の再生実験って書いてありましたが具体的な日付わかりますか?出来れば見学したいんですが。
具体的な日付は決まっていません。ただ雪が降った影響で遅れると思います。雪で折れた木の対応に追われていまして・・・。2月の中頃以降に池に水を入れる予定なのでそれまでには実施したいと思っています。そして水草の再生実験は特にHP上での告知とかをする予定はありません。
Q:その水草の再生実験について教えてください。
池の中にヘドロが溜まってしまっているんですが、その下に昔の植物の種が生きているんじゃないかなって考えていて、そのヘドロをどかして昔の種を日の当たるようなところに撒いて昔の植物を復活させようって実験です。
狭山公園の管理団体について
ここ数年、狭山公園が頑張っているのを肌で感じていたんですよね。で、今回その原因がわかりました。約10年前の2006年4月1日に狭山公園の管理団体が変わっていたんです。10年前までは「公益財団法人 東京都公園協会」が管理していたそうです。そして現在は民間団体の「西武・狭山丘陵パートナーズ」が管理しています。
なぜ管理団体を変えたか詳細は不明ですが、結果として管理費が安くなり運営内容も良くなっています。今回のかいぼりの主催も西武・狭山丘陵パートナーズです。スタッフさん何人かと話しましたが皆さん感じがいいです。
狭山公園パークセンター(管理所)です。狭山公園に関して何か質問があればここのスタッフさんに聞くといいです。
狭山公園パークセンターの外には公園内の写真がたくさん掲示されています。夏はミストシャワーもありました。
イベントも頻繁に実施されています。年間100以上実施しているそうです。体験学習的なイベントも多いので小さいお子さんがいる方は要チェックですよ。イベント情報はパークセンターの掲示板やホームページで確認できます。
まとめ
今回が6年ぶり2回目のかいぼりでした。前回は外来種を800匹駆除したそうですが、今回は106匹駆除したそうです。水入れは2月下旬を予定しています。池の水が元に戻るのは3月ごろみたいです。
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