東村山市の地域通貨「アインPay」を使ってみた感想と辛口レビュー【退蔵益にも注目】

アインPay 東村山市

東村山市の地域通貨「アインPay(アインペイ)」。名前だけは知っていたけれど、実際に使ってみたのは最近。せっかくなので使ってみた感想とともに改善してほしい点や退蔵益についても語っていきます。

もくじ

アインPayってなに?

アインPay(アインペイ)は2023年12月に東村山市が導入したデジタル地域通貨です。発行・運営は「一般社団法人 東村山地域振興機構」(市と商工会の共同設立団体)。システム基盤は株式会社フィノバレーの「MoneyEasy」。

“アイン”は地域愛の”アイ”とコインの”イン”をかけているそうで、志村けんは建前上関係ないらしい(笑)

よくわからないかたにぼくは「東村山版のPayPay」と紹介しています。操作性はほぼPayPayと同じ。PayPay経験者なら問題なく使えるはず。

東村山市役所のアインPayのチャージ器

東村山市役所のアインPayのチャージ器

画像は東村山市役所のアインPayのチャージ器。チャージはセブン銀行ATMと特設チャージ器(東村山市役所とスーパーアルプス東村山店)でできます。

なぜ今さらアインPayを使いはじめたのか?

正直に言います。20%還元キャンペーン中だったからです。

自転車屋さんで4万円分の修理をすることになり、店内で「アインPayで20%還元」のチラシを発見。その場でアプリをインストールし、即チャージ。一撃で8,000円分のポイントが還元されました。これは激アツ!

アインPayの残高表示

自転車屋さんで4万円ほど使用。さらにパン屋さんやスーパーやコンビニで買い物をして合計5万円ほど使用しました。9,540ポイントが付与されています。最高。

なぜ今まで使わなかったのか?理由と課題

ここからが本題。なぜこれまでアインPayを使わなかったのか?
理由はいろいろあります。ユーザー視点での不満点・改善希望点をまとめておきます。

1. 利用できる店舗が少なかった

リリース当初は加盟店が本当に少なかった。アインPayがたびたびポイント還元キャンペーンを実施しているのは知っていましたが、「使えるお店が少ないとせっかくチャージしても使い道がないかも…」と思って見送っていました。

アインPayに対応しているのは、ほとんどが個人店というイメージでした。最近は大手チェーンの参加も増えて改善傾向。後述します。

2. 初回キャンペーンを逃したショックが大きい

最初のキャンペーンがすごかった。

「チャージ金額に30%上乗せ」

1万円チャージしたら13,000円分になるってこと。ルールも緩かったらしく、大金を突っ込んだ猛者もいたそうです。

以下は東村山市議会議員さんのツイート。

90万円弱チャージして26万ポイントもらう
ス..ス…(゚Д゚(゚Д゚ノ(゚Д゚ノ)ノ 凄ッ!!!

この最初の特大キャンペーンを見送った悔しさから、しばらくアインPayは敬遠していました(笑)。

つまりかまいたちの山内さん状態でしたね。

かまいたちの漫才:要約
・(タイムマシーンを1度だけ使えるとしたらどうする?)
・おれはポイントカードをつくる
・(どういうこと?)
・いままでポイントカードを何となく作ってこなかった
・ポイントカードがお得なのはわかる
・でもいまさら作れない
いまポイントカードを作ったらこれまでの買い物にポイントをつけなかったことの後悔を受け入れられない
・だからタイムマシーンを使って過去に戻ってポイントカードを作る
・(いや普通にいま作れや!1回のタイムマシーンもったいないやろ)

いまさらアインPayを作ったら、30%キャンペーンを見送った自分と向きあわなきゃならないでしょ。

3. 平常時の還元率がイマイチ

アインPayの平時のポイント還元率は1%です。これは利用時ではなく、チャージ時に付与されます。

うーん、1%ですか…。正直、わりと普通ですよね。1%還元されるクレジットカードはたくさんありますし、大手電子マネーと比較しても…

還元率の比較
✅利用のクレジットカード:1%
✅PayPay:0.5%
✅楽天ペイ:1.5%
アインPay:還元率1%

楽天ペイのチャージ払いは1.5%付与されますし、WAONを経由してPOSAカードで楽天ペイにチャージするなどのテクニックを使えばさらに1%上乗せされたりもします。

当然、付与されるポイントも大手のほうが使いやすい。さらに細かいこと言うと、PayPayや楽天ペイは付与されたポイントで支払ってもポイントが付与されるので、実質のポイント還元率はわずかに上振れします。

つまり「還元キャンペーンは一時的なものでしょ? 平時が重要だよね? 平時なら大手電子マネーのほうがメリット多いよね」と考えていました。

いまぼくが主に使っているのはPayPayカード。還元率1%でPayPayポイントが付与されます。PayPayポイントはVポイントと相互交換可能になるので使い勝手も良い。クレカの大手どころだと楽天カードも1%還元ですね。

4. 有効期限が短い

これは正直、今回ブログ記事を書くためにリサーチして初めて知りました。

アインPayにチャージしたコインは、最後のチャージまたは最後の利用から1年後が有効期限です(ポイントは付与されてから6か月後が有効期限で延長なし)。

えっ? 短くないですか??

有効期限の比較
PayPay
マネー:無期限
ポイント:通常ポイントは有効期限なし。期間限定ポイントは最短30日から最長180日

楽天ペイ
マネー:10年間
ポイント:通常ポイントの期限は1年だが新たにポイントを獲得で有効期限が延長される。期間限定ポイントもある。

アインPay
マネー:チャージから1年or最後の利用から1年
ポイント:付与から6か月(延長なし)

※現金から交換した原資を「マネー」、付与されたインセンティブを「ポイント」として説明

アインPayの期間が異常に短い。致命的に短い。PayPayや楽天Payなど大手電子マネーと比較すると明らかに不利です。

はい消えた。

正直この有効期限の短さを知った時点で「ダメだこりゃ」「はい消えた」って思いました。そう思ったんだけど、ちょっと待てよ・・・と思考が加速しました。

アインPayの有効期限が短いのは明確な意図があるはず。ここは特に注目すべきで「退蔵益」の発生を助長している制度設計にみえます。後述します。

5. 加盟店側の手数料も安くない

「もしかしたら店舗側に大きなメリットがあるかも!決済手数料がタダだったり格安なのかな?」と思ったんです。

決済手数料の面で間接的に地域の事業主さんを応援できるなら嬉しいですよね。税金が投入されているアインPayだから、その面でかなり優遇されているかもと期待しました。

しかし調べてみたところ、アインPayは換金時に手数料を取っていて、換金手数料率は税込1.7%もしくは税込1.98%(東村山市商工会に加入すると安くなる)のようです。

大手電子マネーの決済手数料と比較してみましょう。

決済手数料の比較
✅クレジットカード:中小個人店は2.5%~4%
✅PayPay:1.6%〜1.98%(税別)
✅楽天Pay:2.2%(税別)
✅アインPay:1.7%〜1.98%(商工会加入で割引)

うーん、イマイチ。
アインPayは換金手数料の無料キャンペーンを実施しているらしいのですが、事業者側としても平時の手数料は気になりますよね。通常の手数料は大手電子マネーと大差ありません。

「地域応援」という観点で考えると、加盟店にもっと優しい手数料でもよかったのでは?という印象。キャンペーン期間中は手数料免除もあるようですが、それは限定的な措置。事業主にとって「アインPayを使ってもらったらうれしい!」って感じじゃなさそうです。

それでもアインPayの利用を「おすすめできる」理由

これまでマイナス面を挙げましたが、現在の**アインPayは「アリ」**だと評価しています。ぼくが東村山の友人や知人にアインPayをおすすめするつもりで、ポジティブな情報をお伝えしますね!

加盟店が増えている(大手も!)

以下のような全国チェーン店でもアインPayが使えるようになってきました。

✅セブンイレブン(東村山市内4店舗)
✅コジマ×ビックカメラ 東村山店
✅ジャパンミート 東村山店
✅スーパーアルプス(チャージ機も設置)
✅マツモトキヨシ
✅その他:東村山市内のAOKI、東京靴流通センター、CoCo壱番屋など

正直に言って、「大手も加入できるのかい!?」って驚きだったんだけど、いち消費者としてはよろこばしいこと。

セブンイレブンがアインPayに加盟できるのなら、ファミリーマートやローソン、ミニストップもいけるはず! もっと増える予感がします。今後も増える期待大。

セブンイレブンなど巨大チェーン店は交渉力が強く、クレジットカード決済手数料は1%らしいです。つまり「むしろアインPayのほうが手数料が高い」となっている。それでもアインPayを導入するのはすばらしい。

還元キャンペーンは断続的につづく(と思う)

当初は「こんなキャンペーンなんて続かないだろ」って思っていました。

「アインPay運営はどこで儲けんだろ」
「儲けどころがなくない?」
「持続可能性あるの?」
「キャンペーン一切なしにすれば赤字にはならないけど平時の魅力がないから誰も使わないよ?」
「ずーっと税金頼りっすか?」
「そんなんじゃキャンペーンなんて続かないよね」
「ってことはアインPay利用する意味なくね?」

こう思っていたけど、えげつないほど退蔵益を得やすい仕組みかもと気づきまして…

いまは「退蔵益という財源があるから還元キャンペーンは断続的につづくだろうな」って予測しています。(詳しくは後述)

東村山市の挙動をみても、そう思う。

東村山市としてはDX推進事業(DXとはDigital Transformationのこと。デジタル技術を活用した組織やサービスを改善させること)の武器としてアインPayを活用したいようです。

📌再生可能エネルギー電力切替支援事業
📌自転車用ヘルメット購入費補助
📌菖蒲まつりへの集客

などにアインPayの行政ポイントを付与してらっしゃる。

東村山市がアインPayを武器として活用したい意図は伝わるし実際に活用しているけど、現状アインPayが普及しきっていないのでイマイチです。

要するにこういうことです。

✔️まだまだアインPayは普及していない
✔️東村山市にはDX推進するためにもっとアインPayを普及&推進させるインセンティブがある
✔️退蔵益という財源がある(税金依存が低い)
💡還元キャンペーンは断続的につづくのでは?
東村山市の人口は約15万人ですが、2024年12月の市報によるとアインPayアプリのダウンロード数は1.7万件とのこと。これはあくまでもダウンロード数です。ダウンロードしてチャージして利用しているかたは1.7万件より少ないです。

【コラム】アインPayと「退蔵益」

退蔵益(たいぞうえき)とは、プリペイド残高やポイントが使われずに失効した際に発生する発行者側の利益のことです。

退蔵益のイラスト

アインPayは大手電子マネーと比較して有効期限がとても短いです。さらに言うと、使える場所も少ない。大手電子マネーは加盟店も多いしネット通販などにも利用可能ですからね。

有効期限が短い&使いどころが少ない=退蔵益になりやすいです。

有効期限を比較
PayPay
マネー:無期限
ポイント:通常ポイントは有効期限なし。期間限定ポイントは最短30日から最長180日

楽天ペイ
マネー:10年間
ポイント:通常ポイントの期限は1年だが新たにポイントを獲得で有効期限が延長される。期間限定ポイントもある。

アインPay
マネー:チャージから1年or最後の利用から1年
ポイント:付与から6か月(延長なし)

これは「狙っているな」とぼくは考えています。

つまりこういうこと。

✔️アインPayの有効期限は最終利用から1年間
✔️有効期限切れしたアインPayはどうなるの?
✔️運営の利益(退蔵益)になります
✔️アインPayは有効期限が短いため退蔵益がでやすい
💡アインPayは計算ずくで退蔵益を得やすくしているのでは?
💡退蔵益こそがアインPayの利益の源泉では?

💳 退蔵益の具体事例

退蔵益の具体例を列挙しておきます。

💳スターバックス(米国)
ギフトにも使えるプリペイド式のスターバックスカードやドリンクチケットを販売。2023年10月期に退蔵益として計上されたのが2億ドル(約300億円)。経常利益に占める退蔵益の割合は4%ほど。

💳近鉄百貨店
2024年2月期に計上された近鉄グループ商品券の未請求債務整理益は10億8800万円。経常利益に占める退蔵益の割合は28%ほど。

💳高島屋
高島屋商品券の2024年2月期の「未回収商品券整理益」の額は15億円。経常利益に占める退蔵益の割合は3%ほど。

💳サーティーワンアイスクリーム
2023年12月期の「販売済み未使用ギフト券収入」は3億383万円。経常利益の16.3%を退蔵益が占めている。

💳宝くじ
毎年おおよそ100億円前後の当せん金が時効(未換金)になっていて、2020年度は販売総額の1.61%と報じられている。会計原則が民間企業とは異なるため経常利益からの退蔵益割合をだすのは難しいが相当に高いと想像ができる。

まとめ

ってことでまとめると、アインPayはアリちゃアリです。

今後も断続的に還元キャンペーンを実施するはずです。いち消費者としては、あざとくキャンペーン期間中に狙って大きな買い物をすると良いんじゃないですかね。

【おわりに】デジタル推進と公平性

東村山市はデジタル推進をしているわけですが、個人的には良いなって思っています。間接的な若者優遇だから。

行政サービスは歴史的に高齢者優遇の側面が強いです。年金、医療、福祉…いずれも高齢世代を中心に整備されてきました。一方で、若者世代にはなかなか直接的な恩恵が届きにくい。アインPayのようなデジタル施策は、そんな若い世代へのささやかな還元とも言えます。

「キャンペーン期間中に狙いを定めて大きな買い物をする」みたいなことって、年配者にはちょっと難しそうだけど若者は難なくできるじゃないですか。

批判があるのもわかります。特にアインPayを活用した行政ポイント施策に対して「高齢者には使いにくい」「不公平では?」という声がある。当然だ。スマホや電子決済に慣れていない方にはハードルがあるかもしれない。

でもそれって進化の副作用では?成長痛では?

「不公平」と言い切るより、世代間バランスの調整と捉えるほうが前向きだと思う。行政サービスの効率を改善できたら余力を他にまわせる。まわりまわって全世代(もちろん高齢者にも)に恩恵をもたらす。

誰も取り残さない設計は必要。使いかた講習会や紙媒体の代替手段も含めて実施するのが理想(一部やってる)。とはいえ、そのさじ加減が難しいですね。

まぁぼくのアインPayの雑な印象はポジティブです。ナイスチャレンジ!って感じ。成功を願っています。

だだぁ!イラスト

やはり平時の1%還元はしょぼすぎますって。最低でも2%、できたら3%はほしい。平時で3%還元されるなら最優先の決済手段としてアインPayを常用します。

はい、アインPayと同じ決済システムを使っている地域マネーを調べさせてもらいました。

東京都世田谷区の「せたがやPay」は、商店街会員で中小個店なら事業主の換金手数料は0%なんですね。

手数料ゼロですよゼロ。ゼロなら事業主は助かるから「キャッシュレス決済はせたがやPayだけにする」みたいな意思決定にもなるでしょうね。消費者も応援消費ができます。

画像引用:「せたがやPay加盟店換金手数料規程」

とはいえ天下の世田谷区じゃないですか。人口は95万人くらいいます。約15万人の東村山市とマーケットサイズも財源余力も違う。世田谷区と比較するのは厳しいものがありますよね。

…ええと、飛騨地域(岐阜県高山市・飛騨市・白川村)の電子マネー「さるぼぼコイン」ってのもありました。

「さるぼぼコイン」は利用者への還元率は2%(チャージで1%&支払いで1%)で事業主の換金手数料は1.5%~1.8%。アインPayと比較して消費者への還元率が高く、事業主への手数料が低いです。飛騨地域の人口は10.5万人です。

ちょっと言い訳ができなくなってきますね。

それでは、アインPayの成功を願って筆を置きたいと思います。ありがとうございました。

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